七十年のあゆみ

創立70周年を迎えた
本会の歩む道

　2017年から会長を拝命しております虎の門病院薬剤部の林です。熱意ある優秀な役員の皆様に支えられ会務を遂行してまいりました。今回は創立70周年の節目に立ち会うことができ光栄です。
　歴代の会長、副会長の先生方をはじめ、多くの諸先輩方のご尽力の積み重ねにより、首都東京における病院・診療所勤務薬尽力の積み重ねにより、首都東京における病院・診療所勤務薬剤師の職能発展に、本会が貢献し続けて来て下さったことに心より感謝申し上げます。

　我が国は、世界に類を見ない速さで少子高齢化が進み、社会福祉と医療提供体制継続の観点から、地域包括ケアシステム及び地域医療構想の具体化が進んでいます。都道府県ごとの人口推移と構成には大きな差があります。東京都における65歳以上の人口は2010年と比較して2025年に50万人以上増加するという他県にない特殊性があります。また、東京都の特徴として高次急性期病院が多数存在しており、他府県からの流入患者が多いことも地域医療構想の調整における特殊要因と聞いています。こうした特殊性を含めて、高次急性期、急性期、回復期、慢性期に区分した病床機能と病床数の再編が東京都においても進められています。病院薬剤師の勤務環境にも変化が生じることを念頭において取り組む必要が生じています。

　2025年問題に対処し、安心と希望が持てる満足度の高い薬物療法を提供し続けられるようにと薬剤師業務に取り組む会員の皆様を支援すべく本会会務を進化させ、さらには東京都福祉保健局や東京都薬剤師会の皆様と連携して対処すべく活動しております。

　本会会務は、長年にわたり教育研修部、広報出版部、医薬情報部、薬務薬制部、中小病院部、診療所部、総務部、会計部の８常置部会を中心に運営されてきました。2017年度に新たに‘専門薬剤師養成部’と‘医療安全部’を新設し医療の高度化に対応した専門薬剤師の養成と、病床機能分化と連携の時代に求められる医療安全への貢献を目指す本会の組織強化を図ってきました。さらに、2018年度から災害対策特別委員会を設置し、万が一への準備として会員研修事業を進めるとともに東京都との協力体制を強化しております。

　2020年にはオリンピック・パラリンピックが東京で開催されます。首都東京の病院薬剤師会として、世界のアスリートをお迎えすべく薬剤師ボランティアの募集への対応やオリンピック選手村総合診療所における薬剤師活動について情報共有するなど取り組みを開始しています。加えて、同年10月31日～11月１日には第50回の日本病院薬剤師会関東ブロック学術大会が東京都病院薬剤師会担当で開催されます。5,000人規模の学会参加者を迎える学術大会になると想定し、準備委員会を立ち上げて、会場の確保やコンベンションの選定などを進めております。現役の本会会員はもとより、OB・OG の皆様、開局薬剤師の皆様、薬学部の先生方や学生さんにも参加していただける学術大会を目指しておりますので、皆様のご支援・ご協力よろしくお願い致します。

　2010年の医政局通知により医師と薬剤師の協働やチーム医療が進展してきました。薬物療法の有効性と安全性の向上に関する取り組みはエンドレスであり、薬剤師への期待も多岐にわたっています。最近では、2016年の医療法施行規則の一部改正により、未承認新規医薬品、適応外・禁忌医薬品への医療機関ごとのガバナンスの強化が求められたことは記憶に新しいことです。2018年４月より臨床研究法が施行され特定臨床研究については国の認定審査委員会の意見を聞いた上で厚生労働大臣に届け出ることが義務付けられました。また、同年４月より改正GPSP が施行され、リアルワールドデータを用いた市販後調査が現実のものとなりました。2018年は医薬品医療機器等法の改正から５年が経過した年にあたり、厚生労働省の医薬品医療機器制度部会において見直しの検討が始まっています。さらに、2019年４月以降の医療用医薬品添付文書は新記載要領に改正され、インタビューフォームも新様式になります。病院診療所勤務薬剤師をとりまく環境は、薬事制度も、取り扱う医療用医薬品も大きく変化してきています。

　それでも病院薬剤師の本質は変わりません。一つひとつの環境変化に柔軟に対応し、会員の皆様が真摯に取り組み職能を発揮されていくことを支援すべく、会務を運営していきたいと考えております。

　創立70周年の節目に何らかの式典を執り行うことを協議しましたが、理事会の総意として式典は行わず記念誌を発行することにとどめ、直近の課題に取り組むことを優先する事となりましたことをこの場を借りてご報告します。

　2025年、そして2035年への道筋を歩み続ける現役世代の病院診療所勤務薬剤師の一人として、引き続き関係の皆様のご助力を賜りますようお願いして、本会70周年記念誌に寄せる言葉に代えさせていただきます。