病院薬剤師の仕事
東京都病院薬剤師会は、病院、診療所等に勤務する薬剤師約5,000名からなる組織です。 私たちは「医薬品のあるところ薬剤師あり」というスローガンを掲げ、患者さんに医薬品を有効かつ安全に使用していただくため、日々最新の知識と技術を学び研鑽しています。
医薬品は正しく使うことで初めて十分な効果が得られますが、 最近の医薬品は効果の高い性質を持つ反面、十分理解して使用しないと逆効果になってしまう医薬品が多くなっています。また、医薬品同士で効果を強めたり、弱めたり、あるいは食事の影響、健康食品やサプリメントとの併用が医薬品の効果に影響を与えることもあります。
医薬品について疑問点がありましたら薬剤師に遠慮なくご相談ください。 私たちは、患者さんが安心して医薬品を使用していただけるように、以下のようなさまざまな仕事をしています。 身近に薬剤師がいることを知っていただき、一緒に治療に参加したいと考えています。 私たち病院や診療所に勤務している薬剤師が、患者さんの利益を守るためにどのような仕事をしているかご存じですか。実にさまざまな仕事をしているか、お分かりいただけると思います。
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目次
病棟薬剤業務
病棟では、医師や看護師をはじめとする多くの職種と連携して、患者さんの入院から退院まで安全かつ効果的な薬物治療が実践できるよう取り組んでいます。
入院時には面談を行い、薬の内服状況や、市販薬・健康食品の使用状況、副作用歴やアレルギー歴等を確認します。
薬の使用前には疾患や症状、年齢、体格、腎臓や肝臓の機能などを把握したうえで、投与量、投与速度また相互作用などの問題がないかを確認しています。
薬を使用する際には効果や飲み方(使用方法)、起こりうる副作用とその対処法の説明を患者さんやその家族に行います。
また治療で使用されている薬の効果が出ているか、副作用が出ていないかを確認して必要に応じてその内容を医師に伝えて薬の処方設計や提案をしています。
退院時には、退院後の生活に合わせた薬の使用(飲み方、服用時間等)ができるよう薬の説明をしています。
チーム医療
チーム医療とは、患者さんにとって最も効果的な治療法や方針を検討するため、医師、薬剤師、看護師、管理栄養士など医療スタッフがそれぞれの専門性を発揮し、協力し合う医療現場の取り組みです。薬剤師は、薬の適正な使用法の提案や副作用・相互作用のチェック、これに基づく処方提案などを行っています。
また、主な専門領域の医療チームには、緩和ケアチーム、感染管理チーム、栄養管理サポートチーム、褥瘡管理チームなどがあります。医療技術の進展とともに薬物療法が高度化しており、チーム医療において、薬の専門職である薬剤師の活躍がますます期待されています。
薬剤師外来
来院された外来患者さんが薬の服用で困っていることはないか、服薬状況や副作用所見が無いかなどの確認を行います。他の医療機関から処方されている薬がある場合は、服用状況や効果の重なる薬が処方されていないか、薬の残薬はないかなどを確認します。
お話しから得られたことを診療に役立つ情報にまとめ、安全で効果的な治療が出来るように医師や看護師と情報共有を行い、場合によっては処方提案も行います。
また、糖尿病治療に使用するインスリン注射の使用方法の指導や、手術前の患者さんの服薬状況のチェックも行います。
医薬品情報業務
医薬品情報(Drug Information略してDI)業務とは、薬を適正かつ安全に使用するための様々な情報を、収集、整理、保管、評価し、医師、薬剤師、看護師などの医療従事者や、患者さんへ提供する業務です。
医薬品情報は書籍や文献、インターネット(行政、製薬企業などのホームページ等)などで収集しますが、近年ICTやIoT、AIなどの進展は目覚ましく、情報量は膨大になってきています。他の医療関係者や患者さんなど医薬品情報を提供する人や目的にあわせて、膨大な情報を評価して、伝わりやすいように加工することは医薬品情報担当薬剤師の主な業務です。
もうひとつ重要な業務として、医療機関内で発生した副作用の情報収集・報告・周知があります。新たに見つかった副作用や、既知であっても重大な副作用を厚生労働省に報告するなどして医療機関や製薬会社と情報共有します。
調剤業務
調剤業務には、処方せんに基づいて、外来患者さんにお渡しする薬を調剤する外来調剤と、入院している患者さんの薬を調剤する入院調剤があります。
処方された薬が正しい用法用量であるか、患者さんにとって適切かなどの確認(処方監査)を行い、必要に応じて医師に問い合わせ(疑義照会)を行います。
その後、処方せんに記載されている薬の取り揃え、水剤や散薬は量をはかって調剤を行います。また患者さんの服薬状況に合わせて錠剤を服用時毎に一包化を行う事もあります。最近では調剤支援ロボット機器の発達も目覚ましく、調剤業務の一画を担っていることもあります。
最後に薬が正しく調剤されているかを、薬剤師が再度チェック(最終監査)を行います。
調剤された薬を患者さんにお渡しする際には、正しい服用および使用方法を説明します。また、お薬相談窓口では患者さんからの薬に関する質問や相談に応じます。
注射調剤業務
注射調剤業務は注射処方せんに基づき、患者さんが使用する注射薬を1回分ずつ調剤する業務のことです。注射薬は急性期の患者さんに使用される場合は、病状に応じて処方内容が細かく変化するため、特に注意が必要です。
薬剤師は処方された注射薬の、投与量、投与速度、投与経路、投与間隔、配合禁忌(混ぜてはいけない薬)などの確認(処方監査)を行います。ここでも、疑わしい点は医師にも確認し、注射薬が安全に使用されるように努めています。最近は、チェックにコンピューターを使ったり、取りそろえをアンプルピッカーと呼ばれる支援ロボットが行うなど、多くの病院で注射薬調剤の機械化が進んできています。
注射薬混合調製業務
注射薬混合調製業務はアンプルやバイアルに入った注射薬を点滴の中に混ぜ、患者さんに使用できるように調製する業務のことです。注射薬は体内に直接投与するため無菌かつ正確な作業であることが求められます。
多くの病院では、高カロリー輸液(長期間食事のとれない患者さんが1日に必要な栄養のほとんどを摂取できる注射薬)や、抗がん薬などの調製業務を行っています。栄養に富んでいると細菌汚染されやすい欠点がある高カロリー輸液の調製に際しては、患者さんの感染リスクの低減を図るため、無菌室(クリーンルーム)にて、細菌や異物による汚染を防止する特別な取り扱いをしています。
また、抗がん薬を取り扱う場合、医療従事者に悪影響を及ぼすものもあるため、防護衣を着用し、安全性が担保される安全キャビネットという専用の設備を使用し混合調製を行っています。
注射薬を混ぜて調製するのは一見簡単なことです。しかし効果の強い注射薬は当然副作用などのリスクも高いものばかりです。それを確実に安全に患者さんに使用できるように、責任を持って調製する、これも薬剤師の重要な職能の一つです。
外来化学療法室
がん化学療法とは抗がん薬を用いた治療のことで、副作用の少ない抗がん剤が開発や、副作用対策する薬の進歩などにより外来で行うことが多くなってきました。
がん化学療法での薬剤師の主な業務として、レジメン(抗がん薬の治療計画書)チェック、抗がん薬調製、医学的・薬学的根拠に基づいた治療法の提案、がんに伴う症状や、治療による副作用を軽くするための予防や治療である支持療法の提案などが挙げられます。特に外来では、患者さんが日常生活を送りながら治療を受けるための複雑な治療スケジュール、副作用や支持療法薬の使い方のサポート等を行っています。
また、がん医療の更なる充実のためには、病院と保険薬局で切れ目のない安心かつ安全ながん医療が行えるような地域連携も求められています。日々発展していくがん領域はこれまで以上に薬剤師の活躍が期待されています。
製剤業務
製剤業務とは、市販されている薬では効果が十分でなかったり、市販されているままでは治療に適さない場合に、患者さんに必要な薬を病院内で調製する業務です。
調製する薬は飲み薬、塗り薬、検査薬など多岐にわたります。調製方法や保管方法などについて、専門的な薬学知識や技術をもって、安全で適切な製剤を調製します。過去に病院内で調製されていた薬には、その後市販化されたものもあります。
救命救急業務
救命救急業務とは、生命の危機に瀕した重症の患者さんが搬送される医療機関の救命救急センターや集中治療室での業務です。
薬剤師は搬送された患者さんの状態に合わせて、薬の選択や投与量・投与方法など確認し、医師等へ助言や、薬剤の調製も行います。中毒患者が来院した場合は原因薬剤の検索や情報提供を行ったり、患者さんに対して、初療の段階で常用薬やアレルギーの確認を行うなど薬剤師の専門性を発揮し、チームで最適な医療を提供できるよう努めます。
救急・集中治療においてはハイリスク薬が多く使用されており、それらの薬の管理も重要な業務となっています。
治験業務
試験管の中での実験や動物実験により、病気に効果があり、人に使用しても安全と予測されるものが「くすりの候補」として選ばれます。この「くすりの候補」開発の最終段階では、健康な人や患者さんの協力によって、人での効果と安全性を調べることが必要です。
こうして得られた成績を国が審査して、病気の治療に必要で、かつ安全に使っていけると承認されたものが「くすり」となります。人における試験を一般に「臨床試験」といいますが、「くすりの候補」を用いて国の承認を得るための成績を集める臨床試験は、特に「治験」と呼ばれています。(厚生労働省ホームページより)
薬剤師は、医療機関における治験を実施するチームの一員として、専門的な立場から治験責任医師・治験分担医師の業務支援、治験薬の保管管理、治験を実施するための計画書(プロトコル)に従い、治験薬が適正に投与されているかを確認することなどの業務を担っています。このように薬物療法の責任を担う薬剤師にとって、治験への関与は必要不可欠となっています。
疑義照会とプレアボイド
疑義照会は処方せんの内容に、疑わしい点や不明な点がある場合に、処方した医師に問い合わせをして確認する業務のことです。処方内容に疑問がある場合、疑義照会をしなければ、調剤をしてはならないことが薬剤師法で定められています。
また、薬を安全に使用するための薬剤師の役割として、「プレアボイド」という制度があります。プレアボイドは英語の「PREvent and AVOID the adverse drug reactions(薬剤による有害事象を事前に回避する)」から作られた造語で、日本病院薬剤師会が中心となって取り組んでいる活動です。
薬剤師の専門性を発揮して、相互作用(飲み合わせ)、投与禁忌(当該医薬品を使用してはいけない患者さん)を未然に回避したり、発生した副作用が重篤になることを防止したりすることで患者さんに不利益を与えないための活動が「プレアボイド」です。
薬剤師が専門的な知識と能力を生かし、処方の内容をチェックすること、患者さんの治療経過に寄り添って安全確認し対処することで患者さんは安心して薬物療法を受けることができます。
日本病院薬剤師会
専門薬剤師
薬剤師は薬の専門職(スペシャリスト)です。薬に対する幅広い知識は持ち合わせていますが、最近の薬物療法の進歩は目覚ましく、臨床現場において各疾患の治療に際し、より深い専門知識の充実が必要な時代となってきています。
がん、感染症、精神科、妊婦・授乳婦など、特定の専門分野において、薬物療法などに関する十分な知識と技術を有する薬のスペシャリストが専門薬剤師で、がんや感染制御、精神科など、様々な分野の専門薬剤師が薬物治療や臨床研究などの一翼を担う存在として活躍しています。
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